2012年 01月 26日
八日目の蝉 角田光代 |
(コピーなので中身検索できません)
逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか…。東京から名古屋へ、女たちにかくまわれながら、小豆島へ。偽りの母子の先が見えない逃亡生活、そしてその後のふたりに光はきざすのか。心ゆさぶるラストまで息もつがせぬ傑作長編。第二回中央公論文芸賞受賞作。
この作品は不倫相手の子供を誘拐した希和子の話と誘拐された子供、恵理菜の話の
2部構成になっている。
この作品は映画化もされているが、私はNHKでドラマ化されたものを途中から見たもので
それでも充分面白かったのだけれど希和子側の心情は理解していたけれど、原作を読んで
恵理菜の心情も知る事ができた。
母性、不倫、未婚の母、誘拐、人との関わり、営利目的の宗教団体・・・・
考えさせられる課題がたくさん出てくるので読者はそれぞれ違った味わい方を
するだろう。
私は、この作品の中の再生と言う部分に惹かれる。
恵理菜は現在の自分を、その環境を過去の事件のせいにする事で心の均衡を
計ってきたのだろう。
けれど、それは歪んだ自分を作ってきた。
否定してきた過去に向き合った時、光が見えてくる。
それは美しい愛情に満ちた光だった。
恵理菜はその過去を認められた時、負の感情を持っていた恋人も
実の両親も認める事ができた。
封印した過去があるならば、むきあわなければいけないと私は思っている。
それが、どんなに辛い思い出として心に傷を残していたとしても・・・。
向き合って吐き出さなければいけない。
私は幼い頃からの母親とか父親との関係を大人になってからも引きずる友達を何人も
知っている。
・・・と言うか、みんな何かしら「あの時こうして欲しかった」と言う思いを持っているのかもしれない。
それは、子供の我儘な甘えかも知れないけれど・・・。
それでも、それを吐き出した時、みんな救われるのだ。
そういう人もまた沢山知っている。
そして、私もそんな一人だ。
私もいつか子供にそうやって責められる日が来るかもしれないけれど・・・。
その時には素直にあやまろうと思う。
・・・・横道にそれてしまったなあ。
他の人とは違う感想かもしれないね。
でも、そんな事を考えた一冊だった。
ラストに向けてドキドキしながら読んだ。
最後の舞台は岡山だ。
ああ、あの道を通って港に向かったのか・・・。
あのフェリー乗り場で希和子は薫への思いを馳せていたのか・・・。
不倫するような男はろくな奴じゃないな・・・とか・・・
お腹を痛めた子だからと言って良い母になれるわけじゃないなとか・・・
人はみんな赤ん坊という存在には優しいんだとか・・・
書き出せばキリがない程ぎっしりと色んなことが詰まった作品だと言う事は間違いない^^;
by suuko3077
| 2012-01-26 16:16
| 本